夜中におしっこが近いのはなぜ?夜間頻尿の原因と薬で改善する方法
2026年6月19日
夜中に何度もトイレで目が覚め、翌朝の疲れや日中の眠気に悩んでいませんか?夜間頻尿は加齢によって起こるから仕方がないと思われがちですが、対策によって改善が期待できる症状です。
本記事では、夜間頻尿の3つの主な原因を医学的根拠に基づき解説します。
- 夜間多尿
- 蓄尿障害
- 睡眠障害
また、就寝前の水分制限や減塩などすぐに実践できる生活習慣の改善方法から、医療機関で処方される薬物治療まで、段階的な対処法を詳しくご紹介。
高齢の方が夜間2回以上トイレに起きる状態が続くと、転倒・骨折のリスクが高まりますが、原因を正しく理解し適切な治療を受ければ、症状が軽減されるケースもあるとされます。
排尿日誌のつけ方や受診のタイミングなど、今日から始められる具体的な行動もお伝えしますので、是非活用してください。
夜中におしっこが近い状態と夜間頻尿の定義
夜中に何度もトイレで目が覚めるのは、決して珍しいことではありません。
医学的には、夜間の睡眠中に排尿のために1回以上起きなければならない状態を「夜間頻尿」と定義しています。
夜中にトイレに行くために起きる症状は加齢とともに増えていき、日常生活に大きな影響を及ぼします。夜間頻尿という言葉は単なる病名ではなく、さまざまな原因が重なって現れる症状のひとつです。
自分の症状がどの程度のものか、医療機関を受診すべきかどうかを判断するためには、まず夜間頻尿の正しい定義を知っておきましょう。
1回以上起きると夜間頻尿にあたり2回以上で生活に支障が出やすい
医学的には1回でも排尿のために起きれば夜間頻尿に該当しますが、夜間に2回以上トイレに行く場合、多くの人が生活の質(QOL)の低下を自覚することが知られています。
トイレに行く回数が増えるほど影響は深刻になると考えられます。睡眠不足から日中の眠気や集中力の低下を招き、活動量の減少につながります。
特に高齢者では、夜間のトイレで転倒や骨折のリスクが高まり、場合によっては寝たきりになる可能性もあるとされます。研究では70歳以上で夜間に2回以上起きる人は、1回以下の人に比べて骨折のリスクが約2倍になると報告されています。
また死亡率も夜間頻尿を有するグループで1.98倍と高くなりました。
加齢とともに増え70代では約8割が経験する
夜間頻尿は年齢を重ねるほど増える症状です。
上記の調査では年齢を追うごとに夜間頻尿があると答える方達は増え、40代は男性30%程度、女性25%程度だったのが、80代になると女性は90%近く、男性は100%に到達してしまいます。
- 加齢に伴う膀胱の筋力低下
- 夜間に尿を作る量を調整するホルモンの減少
- 高血圧や糖尿病などの生活習慣病の増加
つまり夜間頻尿は、誰にでも起こりうる自然な変化といえるでしょう。しかし睡眠不足や転倒リスクを考えると、「年齢のせいだから仕方ない」と放置すべきではありません。
夜間に尿意で目が覚める3つの原因
| 原因タイプ | 主な特徴 | 1回の尿量 | 昼間の症状 |
|---|---|---|---|
| 夜間多尿 | 夜間の尿量が多い | 正常 | 少ない |
| 蓄尿障害 | 膀胱に溜められない | 少量(100ml以下) | 頻尿あり |
| 睡眠障害 | 眠りが浅い | 様々 | 日中に眠気あり |
それぞれの特徴が独立して現れるケースもあれば、複数の原因が同時に存在することも少なくありません。
自分がどのタイプに当てはまるかを知るには、夜間の尿量や排尿のタイミングの記録が有効です。原因を正しく理解しておくと、効果的な改善への第一歩となります。
水分や塩分の摂りすぎによる夜間多尿
夜間に作られる尿の量そのものが増加している状態を指します。65歳以上では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合が該当するとされます。
- 水分の摂りすぎ:「脳梗塞予防のため」と就寝前にコップ1杯以上の水を飲む習慣がある人も多いのですが、実は過剰な水分摂取は夜間頻尿の直接的な原因となります。
- 塩分の摂りすぎ:塩分が多いと喉が渇いて水分摂取が増え、さらに体内のナトリウムを排泄するために尿量が増加します。
- 加齢:加齢とともに抗利尿ホルモン(夜間に尿を濃縮して量を減らすホルモン)の分泌が低下するため、夜間の尿量が自然と増えてしまうのです。
- アルコール・カフェイン:アルコールやカフェインにも利尿作用があるため、夕方以降の摂取は控えるのが賢明です。
膀胱に尿を溜められなくなる蓄尿障害
膀胱に十分な尿を溜められなくなる状態です。正常な膀胱は300〜500ml程度の尿を溜められますが、この機能が低下すると少量の尿でも強い尿意を感じてしまいます。
代表的なのが過活動膀胱です。膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに膀胱が勝手に収縮してしまい、突然の強い尿意(尿意切迫感)を感じる状態です。過活動膀胱を抱えている場合に夜間頻尿が伴いやすいとされています。
また男性では前立腺肥大症が原因で膀胱に負担がかかり、蓄尿障害を引き起こすケースも多く見られます。
女性の場合は、出産や加齢で骨盤底筋が弱くなり骨盤臓器脱などの疾患によって、夜間頻尿や尿失禁などにつながります。
| 夜間 | 尿量は正常でも頻繁にトイレに行きたくなる |
|---|---|
| 昼間 | 膀胱の容量自体が低下しているため昼間も頻尿の症状を伴う |
| 排尿量 | 1回の排尿量が100ml以下と少量(※この点が夜間多尿と異なる) |
眠りが浅く尿意を感じやすい睡眠障害
睡眠障害も夜間頻尿の重要な原因のひとつです。高齢になると深い睡眠が減って浅い眠りが増え、中途覚醒が多くなります。
尿意で目が覚めるのではなく、目が覚めたことで尿意を感じてトイレに行くという順序になる方も少なくありません。
特に注意が必要なのが睡眠時無呼吸症候群です。眠っている間に10秒以上の呼吸停止が繰り返される病気ですが、夜間頻尿の原因となるケースもあります。
無呼吸状態により血液中の酸素濃度が低下すると、交感神経が優位になって膀胱が収縮しやすくなり、尿意を感じやすい状態になってしまうのです。加えて、無呼吸による心臓への負担から利尿ホルモンが分泌され、夜間の尿量が増える場合もあります。
睡眠障害による夜間頻尿は、泌尿器の治療だけでは改善しません。いびきや日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査も検討する必要があるでしょう。
男性と女性で異なるおしっこが近くなる背景
夜間頻尿の原因を探る上で、性別による違いを理解しておくことも大切です。男性と女性では体の構造やホルモンのはたらきが異なり、それぞれに特有の原因が存在します。
- 男性:男性には前立腺があり、加齢とともに肥大すると膀胱に負担をかけます。高齢者の方が頻尿に悩む割合が高くなります。
- 女性:女性は出産や女性ホルモンの変化により骨盤底筋が弱くなりやすいです。若い世代に頻尿が多い傾向があります。
男性に多い前立腺肥大症と女性に多い骨盤底筋の衰え
男性特有の原因として最も多いのが前立腺肥大症。前立腺は膀胱の下で尿道を取り囲む臓器で、加齢とともに大きくなります。
肥大すると尿道を圧迫し、排尿のたびに膀胱に負担がかかって過敏になるのです。70歳台の男性の約12%に前立腺肥大が見られます。
女性は、骨盤底筋の衰えが大きな原因。膀胱や子宮を支える骨盤底筋は、妊娠・出産でダメージを受け加齢や肥満で弱くなります。
筋力が低下すると膀胱が下がり、尿道を締める力が弱まって頻尿や尿漏れを引き起こすとされています。咳やくしゃみで漏れる腹圧性尿失禁は、典型的な初期サインです。
女性の場合、骨盤底筋の衰えにより尿漏れと夜間頻尿が同時に起こることがあります。
過活動膀胱や生活習慣病は男女共通の要因
性別を問わず夜間頻尿の原因となるのが過活動膀胱です。40歳以上の約12%の方が抱えているとされ、男女ともに加齢で増加します。
突然の我慢できないような強い尿意(尿意切迫感)を主症状とする症候群です。時には間に合わず尿が漏れる(切迫性尿失禁)こともあります。
- 急にトイレに行きたくなる
- トイレが近い(頻尿)
- 夜中何度も起きる(夜間頻尿)
膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに勝手に収縮し、突然の強い尿意を感じる状態です。脳と膀胱を結ぶ神経の障害で起こる神経因性のものと、それ以外の非神経因性のものが原因とされています。
さらに注意が必要なのが生活習慣病。糖尿病では高血糖により多尿になり、神経障害で排尿コントロールが乱れます。
また高血圧だと夜間の血圧低下が起こらず夜間尿量が増加し、頻尿のリスクを高めるのです。生活習慣病による夜間頻尿は、いずれも男女共通のリスク要因とされています。
薬を使う前に試したい生活習慣の見直し
軽度から中等度の夜間頻尿であれば、まず生活習慣の改善から始めることが推奨されます。水分の取り方や食事内容を見直すだけで、症状が改善するケースも少なくありません。
水分の摂取量や塩分制限などの生活指導はエビデンスは十分ではないものの第一選択とされています。まずは自分でできる対策から始めてみるのも良い方法です。
就寝3時間前から水分・カフェイン・アルコールを控える
夜間頻尿を改善する最も基本的な対策が、就寝前の水分コントロールです。高齢者は脱水が脳梗塞の発症因子であるという報告がありますが、過度に水分を摂取しても脳梗塞の予防になるというエビデンスはありません。
水分量を調節したり、就寝前には水分摂取を控えたりするとよいでしょう。
| 避けたい飲み物 | おすすめの飲み物 |
|---|---|
| コーヒー 紅茶 緑茶 アルコール |
ほうじ茶 番茶 ハーブティー(カモミール、ペパーミントなど) 麦茶 |
- カフェイン:カフェインには強い利尿作用があり、効果は4〜5時間持続します。夕方以降はほうじ茶やハーブティーなどのカフェインレスの飲み物に切り替えましょう。
- 番茶:番茶は煎茶などに比べるとカフェイン量は低いので、どうしてもお茶を飲みたいときには選びましょう。
- アルコール:アルコールはさらに注意してください。利尿作用に加え、抗利尿ホルモンの分泌を抑制して夜間の尿量を増やし、睡眠の質も低下させます。飲酒する場合は量を減らし、就寝3〜4時間前には切り上げてください。
減塩と夕方の運動で夜間の尿量を抑える
塩分の過剰摂取は夜間頻尿の重要な原因です。塩分が多いと喉が渇いて水分摂取が増え、体内の水分貯留により尿量も増加します。
1日9.2g以上の塩分摂取は夜間頻尿の独立した危険因子とされており、減塩目標は1日6g未満が推奨されています。
夕方の適度な運動も効果的です。散歩やスクワット、ダンベル運動などを行うと、筋肉のポンプ作用で下半身に溜まった水分が血管内に戻り、日中のうちに汗や尿として排出されます。
むくみ対策としては弾性ストッキングの使用も有効。また、昼間に脚の下にクッションを置いて足を上げて休むと、日中のうちに水分の排出を促せます。
排尿日誌で自分のタイプを把握する
排尿日誌は、夜間頻尿の原因を見極められます。排尿時刻と排尿量を記録すると、自分の排尿パターンを客観的に把握できます。期間は2〜3日間を目安として記録しましょう。
記録から読み取れる情報は多様です。
- 夜間多尿型:夜間の尿量が1日の総尿量の3分の1以上を占める
- 蓄尿障害型:1回の尿量が150ml未満で回数が多い
医療機関を受診する際、排尿日誌は診断の重要な資料となります。問診だけでは分かりにくい排尿パターンや水分摂取との関係を、医師が正確に把握できるからです。記録によって自分の生活習慣も見直しやすくなるでしょう。
医療機関で行われる検査と薬による治療
生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合は、医療機関での検査と治療が有効です。泌尿器科では排尿日誌に基づいた問診、尿検査、超音波検査などを行い、夜間頻尿の原因を特定します。
診断後は原因に応じて薬物治療を開始します。夜間多尿型には抗利尿ホルモン製剤、蓄尿障害型には過活動膀胱治療薬など、個々の状態に合わせた処方が行われ、適切な治療により夜間のトイレ回数を減らせる可能性があります。
泌尿器科での問診・尿検査・超音波検査の流れ
初診時にはまず詳しい問診が行われます。
- 夜間のトイレ回数
- 症状が始まった時期
- 既往歴
- 現在服用中の薬
さらに排尿日誌があれば、それをもとに医師が症状を把握します。
- 感染症:尿中の白血球や細菌でわかる
- 糖尿病:尿中の糖からわかる
- 腎機能の状態:尿中の蛋白からわかる
排尿後の残尿量を測定して膀胱の機能を評価します。
また、性別により以下の検査(観察)が行われます。
| 男性の場合 | 前立腺の大きさを確認し、前立腺肥大症の有無を判断 |
|---|---|
| 女性の場合 | 膀胱の形状や膀胱壁の厚さを観察 |
いずれの検査も通常初診日に完了し、痛みを伴いません。
原因に合わせて処方されることが多い薬
診断後の薬物治療は原因に応じて選択されます。
| 原因タイプ | 処方される薬 | 作用 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| 蓄尿障害型 | 抗コリン薬 | 膀胱の収縮を抑える | 口渇、便秘 |
| β3作動薬 | 膀胱の収縮を抑える | 比較的少ない | |
| 夜間多尿型 | デスモプレシン | 尿量を減らす | 低ナトリウム血症 |
蓄尿障害型の過活動膀胱で使用する薬剤は、膀胱の不随意収縮を抑える目的で使用されるケースが多いです。
夜間多尿型には抗利尿ホルモン製剤が有効とされます。腎臓での水分再吸収を促進して夜間の尿量を減らしますが、現在は男性のみ保険適用で、低ナトリウム血症に注意が必要です。
腎機能を補い水分代謝を改善する作用が期待できる漢方薬を用いることもありますが、近年では新たな報告が見られていません。
夜中のトイレが気になったら泌尿器科へ相談を
夜間頻尿は加齢による自然な変化と考えられがちです。しかし、原因はひとつだけではないため、専門家の診断を受けたほうが良いケースもあります。
背後に糖尿病や心不全などの重篤な疾患が隠れている場合もあります。
どの診療科に行くとよいのか気になりますが、まずは泌尿器科がよいでしょう。泌尿器科は排尿の悩みを専門的に扱う診療科です。
またかかりつけ医がいるなら、夜間のトイレに関する相談をし適切な診療科への紹介を受ける方法もあります。
夜間2回以上トイレに行くのが続く場合は早めに受診する
夜間2回以上トイレに起きる状態が続く場合は、医療機関への受診を検討しましょう。2回以上になると生活の質に大きく影響し、転倒・骨折のリスクも高まります。
- 血尿:膀胱がんや膀胱炎の疑い
- 排尿時の痛みや発熱:膀胱炎や腎盂腎炎など、感染症の疑い
血尿などの症状がある場合は早急に受診してください。重篤な疾患の早期発見につながり、適切な治療により速やかな改善が期待できます。
夜間頻尿は我慢する必要のない症状です。専門医に相談してより快適な生活を取り戻しましょう。


